らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【自作小説】ランスの冒険

 

 


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まだランスが小さい頃のお話です。


休日いつもはのんびりしているもぞさんが、

忙しそうにカバンに荷物を詰めています。


ランスはその様子を、きょとんとしながら見ていましたが、

もぞさんは「さあ、ランス行くよ。」と、抱き上げると、

そのままリュックに入れて、どこかに出かけて行きました。

 

背中のリュックに揺られ、ランスは考えました。


これからどこに行くんだろう?


わくわく半分、そわそわ半分、ランスには見当もつきませんでした。

 

しばらくして、もぞさんは、ある建物の中に入って行きました。

リュックの中から聞き耳を立てると、受付の人と何か話をしている声がします。


「それではランスをお願いします。」


バタンと建物の扉が閉じられると、もぞさんの声はしなくなりました。


ほどなくしてリュックのチャックが開けられると、

お姉さんの顔が見えました。


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「ランスちゃん、このゲージに入ってね。」

ランスがゲージに入ると、ガチャンと鍵がかけられ、その部屋からお姉さんは出て行きました。

 

ゲージの周りはしーんと静かになりました。


ランスは一人しょんぼり考えました。


僕は捨てられちゃったんだろうか・・・


ランスは何度もニャニャ、ニャニャとため息をつきました。

 

するとどこからかランスを呼びかける声がします。

最初ぼーっとしていて、返事をしませんでしたが、

次第に呼びかける声は大きくなります。


「オイ!オイってば!」


それは向かいのゲージに入れられていたビーグル犬でした。


「僕を呼んでいるの?」


「そうだよ!お前、何しょぼくれてるの。飼い主に捨てられたと思ってんの?」


ランスは黙っていました。


「心配することねーよ。ここは、飼い主に用事があるときに預けられるとこなんだ。1日2日で迎えに来てくれんよ。」


「えっ、それ、本当!?」


「本当だよ。俺はウソは言わねえよ。」


「じゃあ、よかった。。」


ランスはちょっとホッとしました。

 

向かいのゲージのビーグルは言いました。


「俺、ワン吉。よろしくな。」


「ワン吉くん、僕ランス。よろしくね。」

 

ワン吉は嬉々としておしゃべりを続けました。


「ところでさ、ランス、お前、腹減ってない?」


「うん、安心したらちょっとお腹が空いた。」


「じゃあ、ご飯をもらいに行くか。」


「もらいに行くって。。どうすればいいの?」


「お前、ご飯のもらい方も知らねえの?

全くしょうがねえなあ。じゃあ、俺のやり方を見てろよ。」


ワン吉はすっと息を吸うと、けたたましく鳴き始めました。


ワワワワワンワンワンワン!!

 

するとドアの向こうから、お姉さんがやって来ました。


「まあ、ワン吉くん、どうしたの?お腹が空いたの?じゃあご飯あげるからね。」


お姉さんはご飯を持ってきて、

ワン吉はガツガツと食べ始めました。


「なっ、こうやるんだ。簡単だろ。

お前もやってみろよ。」


「でも僕、やったことないんだ。

ご飯は何もしなくても、もぞさんがが持ってきてくれたんだ。」


「バカヤロー!そんなことじゃ、生き残れないぞ。

いいから俺がやった通りにやってみろ。」


「う、うん、わかった。」


ランスは仕方なく、小さな声で鳴いてみました。


「にゃわん。」


「バカヤロー! そんな声じゃ誰も気づいてくれないぞ。

もっと腹から声を出すんだ!!」


「ニャ、ニャワーン!」


「そうだ、その調子だ。もうひと息だ。」


「ニャニャ、ニャワワーン!!」

 

するとドアの向こうからお姉さんが現れました。


「まー、ランスくんもお腹空いたの?じゃあご飯あげるから。」


ランスのところにご飯を持ってきてくれました。


おいしい、おいしい。

ランスはパクパク食べました。


「なっ、俺の言った通りだろ。」


ワン吉は舌をペロッと舐め上げました。


お腹も一杯になり、ホッとしたランスは、その日はそのまま丸くなって寝てしまいました。

 


どれくらい眠ったことでしょう。

ランスが目を開けるとまだ夜明け前です。


ああ、ここは家じゃなかったんだ。。

そこはゲージのプラスチックのひんやりとした床でした。


ランスは考えました。


ワン吉くんはああ言ってたけど、

もぞさんは本当に迎えに来てくれるんだろうか・・・


ランスは少し不安になりました。

そして、家のふかふかのソファーで寝ていた時のことを思い出しました。

 

そうしているうちに次第に窓の外は白々と明るくなってきました。


するとワン吉がパチリと目を覚ましました。


「ランス、もう起きてんのか?」


「うん、起きてる。」


「腹減ってるか?」


「うん。」


「じゃあ、朝ごはんの催促一緒にやってみるか。せぇーの!」 

 

ワワワワワンワンワン!!


ニャニャニャニャ、ニャワワーン!!

 

すると、お姉さんがドアの向こうからやって来ました。


「まあ、ワン吉君、ランス君、おはよう。朝から元気ね。

今ご飯持ってくるから待っててね。」


二人は山盛りの朝ご飯をガツガツ食べました。

ランスはお腹一杯になって、しばらくうとうとしてしました。

 


しばらくしてお昼過ぎくらいになった頃でしょうか、

外で声がするのが聞こえます。


「すみません。もぞですが、ランスを引き取りに来ました。」

「わかりました。ランスくん、朝からすごい山盛りご飯全部食べたんですよ。」

「へえー、そうなんですか。」


もぞさんとお姉さんのやり取りが聞こえます。


あっ、もぞさんが迎えに来てくれたんだ!!


ランスはそれに気付くと、いてもたってもいられなくなり、

ゲージの扉をガリガリし始めました。


するとほどなくお姉さんが現れ、


「ランスくん、お迎えが来たわよ。」と、ゲージの鍵を開けてくれました。


ランスは嬉しくて嬉しくてたまりませんでした。


「ワン吉くん!

ワン吉くんの言った通りだったよ。いろいろありがとう。

じゃあ、ぼく帰るね。」


ワン吉は眠っていた片目をぱちりと開け、

ランスの方を見て、舌をペロンとさせて言いました。


「じゃあな、上手くやれよ。」


ランスは、もぞさんのリュックに詰められ、家へと帰って行きました。


行きの時の気持ちとはまるで違います。

家に帰れるというワクワクとした気持ちでランスの心はいっぱいでした。


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それからというもの、もぞさん宅では、

明け方、眠りから覚めて朝ごはんをねだるランスの鳴き声が、

毎日のように聞かれるようになりました。

 

ニャニャニャニャニャワワーン!!


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おわり🐈

 

 


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ワン吉

 

 

この物語は、自分が法事で一泊二日で帰省した際に、

ランスをペットホテルに預けた時、その様子を想像して創作したものです。