らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

【万葉集2012】2 梅の花 夢に語らく

今回感じ入った歌は



梅の花
夢に語らく
みやびたる
花と我思(あれも)ふ
酒に浮かべこそ



大伴旅人



梅の花が夢の中で
語ったことです
風流な
花だと、私は自分でそう思います
どうぞお酒に浮かべてくださいな





この歌はたった三十一文字で、
梅の花のかわいらしさと、梅の宴でいただくお酒美味しさを見事に表現し、
春の宴の楽しく風流な雰囲気が、梅の花の香とともに静かに漂ってくるような、
とても素晴らしい歌だと思いました。

最初に読んだ時、それらのイメージが一瞬に頭の中でふくらんで
おおっ、すごいと思いました。
万葉集を代表する歌人の底力を見たような…

またこれは、梅の花とお酒をこよなく愛していないと詠めない歌ですね。

しかし梅の花のかわいらしさを、このように表現する方法があったとは。
まさに恐れ入りましたという気持ちです。


この歌を選んだのは、ソムリエで有名な田崎真也氏です。

田崎氏は、この頃、大伴旅人が長年連れ添った妻を亡くしていることから、
梅を妻に見立てたのではないかとおっしゃっていました。

つまり梅が好きだった亡き妻が、
夢の中で梅の花となって、
私は常にそばにいますというイメージで詠んでいるのでは。
とのことでした。
さらに、この歌自体は妻を亡くした寂しい思いから、
一人酒を飲んで、その席で梅を見ながらできたとも考えられ、
ネガティブでなくポジティブに考えることを思いついたのではないかと思いますとのこと。

そのような背景を知ると、あー、なるほどと思いますが、
少し背景に歌の解釈を引きずられすぎのような感もします。

自分は芸術作品は、基本的に作品の中でのみ語るものという考えをもつ者です。
いろいろな背景によって作品は出来上がるわけですが、
それらのものを作者が総合的に考慮して作品ができあがる。

ですから、作品を鑑賞する場合、背景うんぬんより、
作品自体から感じることに重きを置くように心がけています。

そのようにして、自分なりにこの作品をみると、

かわいらしい梅の花と、梅の花びらが浮かんだお酒をたしなもうとする
詠み人ののささやかな楽しさ、喜びというものを感じます。

現代の桜の花見のような賑やかな印象は受けません。

静かに慎ましやかに、梅の花を慈しみ、楽しむ。

田崎氏の言うように、詠み人は、妻を亡くした悲しみを背負って詠んでいるのかもしれません。

しかし、それは歌の中では前面には出てきません。

ひょっとしたら抑制的な静かな歌のイメージから、
亡き妻を偲ぶ思いがこめられているかもしれません。
しかしその思いはこの歌の中では突出してはおらず、
梅の花に対する心情のひとつとして、封じ込められているのではないかと感じます。


作品と背景ということに関しては、他の芸術作品でも盛んに論じられているようです。

いろいろな考え方があるでしょうが、
自分は記事で述べたようなスタンスで、
作品を鑑賞するように心がけています。
 
ただ、どちらが正しくて、どちらが間違っているというようなものでもないとは思います。