らんどくなんでもかんでもR

はじめまして。文学や美術、音楽、そして猫のブログをしています。 よかったら、のぞいてみてくださいね。 Nice to meet you. I write about literature, art, music, and cats.

あ行の作家

「城下の人」後編 石光正清

続きです。熊本城がなかなか落ちないという事は、すなわち西郷軍の苦戦を意味します。それからほどなくして田原坂の防衛ラインを政府軍に破られ、西郷軍は後退を余儀なくされ、戦死者は日増しに増していきました。少年たちは西郷軍の死者を安置している寺の…

「城下の人」前編 石光正清

この作品は、明治維新の年に熊本で生まれた石光正清という人物の、新しき明治の世での生きざまを描いた自叙伝です。作品前半は、少年時代、熊本士族として熊本城下に在住していた頃、熊本城に攻めてきた西郷軍を目の当たりにした体験を詳細に記しています。…

「猫と杓子について」織田作之助

そういえば最近、「猫も杓子も」という言葉をほとんど聞くことはありませんね。「猫も杓子も」というのは、どいつもこいつも、皆総じて、という意味の言葉であり、多少、こんな奴らでも、という軽んじた語感を含んだものに思います。 しかし、この言葉、元々…

「雪の日」岡本かの子

岡本かの子は、岡本太郎のお母さんに当たる人です。岡本太郎といえば、大阪万博の太陽の塔がその代表作として有名ですね。岡本かの子自身、歌人および作家として活躍した人で、近年、大学受験のセンター試験で、その作品が出題されたこともあります。https:/…

「眠い町」小川未明

これは一種の予言小説です。ケーという少年が、旅の途中に眠りの町と呼ばれる町にやってきます。その町とは、「音ひとつ聞こえるではなく、寂然しんとして昼間も夜のようでありました。またけむりひとつ上がっているではなく、なにひとつ見るようなものはあ…

「雪の一日」岡本綺堂

今週の木金あたり、首都圏ではまた雪の予報となっています。やっと前回の雪が溶け切ったかなと思っていたのに、またかというところですが、今年の冬は、例年より空気が冷たく、まだまだ何回か雪に見舞われそうな予感がします。 さて、この作品、今から100年…

「ああしんど」池田蕉園

明治の世、この家の曾祖母が飼っていた猫の「三(さん)」は、18年も生きている老猫でしたが、冬にこたつの上で丸くなって寝ていたところ、伸びをして、「ああしんど」と言ったところから、それを聞いた家族がびっくりしたというお話。猫がしゃべったのを聞…

「ヴェロニカ」遠藤周作 教科書名短篇より

この物語に登場するルオーの「ヴェロニカ」。ある画廊で、赤いベレー帽をかぶった女性が、ずっと熱心に取りつかれたように見つめていた絵画。茨の冠をかぶせられ、苦痛と苦しみに耐えるキリストが、何かを訴えるような眼差しで、こちらを見つめているこの作…

「あこがれ」阿部昭 教科書名短篇より

自分は読書ブログを始めてから久しく経ちますが、その作品のほとんどは、短編もしくは単行本で150ページほどの中編で、長編の作品はほとんどありません。それはなぜかと言いますと、自分の性分的に一気に作品を読み切らないと、物語がひとつの塊として心に残…

「人でなしの恋」江戸川乱歩

19歳の京子は、地元の名士の家に嫁入りをする。夫は資産家の美青年で、京子にとって、それは世の妬みを買うほどの恵まれた縁組みだった。京子はそのような夫に愛され、有頂天となるが、半年ほどして、京子はその愛がまやかしであることに気づき始める。京子…

「信長公記」太田牛一

ときは今天(あめ)が下(した)しる五月哉(さつきかな) 備中高松城で毛利と対峙している羽柴秀吉救援のため、出陣直前の明智光秀が詠んだ歌。新暦に直すと6月のちょうど梅雨真っ只中の今時分のこと。一見、梅雨の時節の雨の情景を詠んだ歌にも思われます…

「紫陽花」泉鏡花

今回は泉鏡花の「紫陽花 」です。泉鏡花の作品は、私達が普段慣れ親しんでいる口語体ではなく、擬古文で書かれており、今の我々には少々読むのに骨が折れるものではありますが、この耽美的で、静謐かつ美しい物語は、口語体は表現できなかったでしょう。文語…

「猿飛佐助」織田作之助

今月のテーマは「猿」のわけですが、猿の字のつく歴史上の人物はと問われると、これがなかなか無いんですよね。猿というのは古来から日本にいる動物のはずなんですけれども、ちょっと不思議なくらい見当たりません。 猿の字のつく歴史上の人物で、まずもって…

「年賀郵便」岡本綺堂

岡本綺堂は明治から昭和初期に活躍した劇作家で、「半七捕物帖」「修善寺物語」の作品など有名ですが、このような随筆も書いています。読んでみますと、明治の日清戦争の前頃までは、年賀というのは、正月に相手のお宅を直接訪問して挨拶することを意味し、…

「和宮様御留」後編 有吉佐和子

前編http://blogs.yahoo.co.jp/no1685j_s_bach/14315492.html前編で、歴史上における、公家の、幕府(武家)に対する屈折した思いの話をしました。 江戸時代の二百数十年にわたって、京の狭い内裏の中に押し込められて生きてきた公家の、心の命綱である、自…

「和宮様御留」前編 有吉佐和子

幕末の動乱期、公武合体により時の将軍徳川家茂に降嫁した皇女和宮。縁の発端は政略結婚だったとはいえ 、同じ年頃の二人は非常に仲睦まじかったと伝えられています。そして、夫家茂が若くして亡くなった時、 妻である和宮はそれを嘆き悲しみ、自らの髪を切…

「きけわだつみのこえ」上原良司さんの遺書より

明日、8月15日は終戦記念日。今年で、先の大戦から70年が経過しました。70年といいますと、明治維新(1868)から第二次大戦(1939-1945)までの長い時代のスパンが経過したのと、ほぼ同じ長さの時が経過したことになります。その長い間、曲がりなに…

「みちでバッタリ」岡真史

みちでバッタリ出会ったヨなにげなく出会ったヨそして両方とも知らんかおでとおりすぎたヨでもぼくにとってこれは世の中がひっくりかえることだヨあれからなんべんもこの道を歩いたヨでももう一ども会わなかったよ詩集「ぼくは12歳」よりこの作品は、岡真…

「雨の日には雨の中を」相田みつを

気高くそびえている聖人や偉人の言葉は、確かに素晴らしいと思います。しかし、悪い意味で、近寄りがたい気高さもあります。 それにくらべると、あいだみつをさんの書は、身近にいるおじさんが、親しみをこめて励ましてくれるような暖かみがあります。まず…

「魔女のパン(Witches' Loaves)」O・ヘンリー

http://msp.c.yimg.jp/yjimage?q=BzJ5sRoXyLGgYult_n_uWFk4SsoZhR8QUdrXxcEJ_GaHyWJ6YXg3btY_3F8bBnRIQe_GHGP0yjFKT3tlVOWtQDPYmph5B2ssTnOQpqbKMAhWgKjmfdNqnKBLj54WFshO&sig=12ronbmth&x=170&y=113 街角の小さなかわいらしいパン屋を営むミス・マーサ。4…

「快走」岡本かの子

今年も巡ってまいりましたセンター試験の季節。受験生の皆さんはお疲れ様でした。自分も文学のブログを運営している威信?にかけて、今年も懲りずに小説の問題に取り組んでみました。今年の出題は岡本かのこ「快走」という作品。昨年と同じく青空文庫収録の…

「残された人々」アレキサンダー・ケイ(未来少年コナン原作)

2013年、今年の夏、引退する宮崎駿監督最後の作品である「風立ちぬ」が話題となりましたが、1978年、NHKで放映されたアニメ「未来少年コナン」は宮崎駿初監督作品。アレキサンダー・ケイ「残された人々」はその原作となります。近未来において、…

「母をたずねて三千里」エドモンド・デ・アミーチス(原作「クオレ」より)

もともと「クオレ」という、イタリアの少年の学校生活を描いた作品の中の、毎月の先生の講話のひとつである「アペニン山脈からアンデス山脈まで」という一編。イタリアの港町ジェノバに住む少年マルコは、両親と鉄道学校に通う兄とで慎ましく暮らしていまし…

「西瓜」岡本綺堂

お盆は終わりましたが、まだまだ暑い夏の日が続いていますね。夏といえば思い浮かぶものといえば、やはり「西瓜」でしょう。冷蔵庫で冷やして、赤いみずみずしい果肉をしゃきしゃきと食べると一時(いっとき)夏の暑さを忘れます。そして、もうひとつ夏とい…

「朝顔日記の深雪と淀君」上村松園

この作品は、生涯、日本女性を描き続けて、その理想の美しさとは…ということを追求してきた日本画家上村松園が、当時の大正時代の女性の風俗に、忌憚なく苦言を呈した文章です。結構、最初から全開でいろいろなことを言っているんですが、強引にまとめますと…

「母への追慕」上村松園

前回の記事でも申し上げましたが、松園は生まれる2ヵ月前に、父親を亡くし、母と幼い姉との生活を送ることになります。言い方を変えますと、松園の母は臨月の身重で、頼るべき夫を失い、幼い娘二人を抱える身となったのです。この時、松園の母26歳。皆さ…

「作画について 序の舞」上村松園

自分が子供の頃、「序の舞」という映画が公開されました。名取裕子さん主演で、とある女性日本画家の生き様を描いたものです。その女性の名は上村松園。もともとは宮尾登美子さん原作の作品なのですが、どうも映画では、主人公の、男性に対する情感、情愛の…

「たま虫を見る」井伏鱒二

今回の小説は青空文庫収録のものではありません。もしかしたら教育関係者や高校生の方はピンと来たかもしれませんね。そうです。これは今年のセンター試験の小説の問題文になった作品なんです。問題文は小説の全文になっていますので、朝御飯を食べながら、…

「野菊の墓」考 伊藤左千夫

以前大学生のブログ友達と話をしていましたら、どうも昔の小説は古い感じがして読みづらい。だからどうしても敬遠してしまう。というようなことを言っていたことがありました。確かに明治大正あたりの作品ですと、すでに百年経過していますから、ものによっ…

「野菊の墓」伊藤左千夫

「野菊の墓」は15歳の少年政夫と2歳年上の従姉民子との淡く切ない恋を描いた作品です。子供の頃読んで、ぼやっと覚えていた程度だったのですが、ブログ友達の方が記事に可憐な野菊の画像を掲載してくれたことに触発され(^^)今回読み直してみました。政夫…